元オリンピック競歩選手 柳澤哲 
トップアスリートの目 

bプロフィール
柳澤哲氏
東大柏キャンパス・生涯スポーツ健康科学研究センター研究員



* 目次 *

 
 

平成20年8月30日号 No.159

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.13
「五輪を観て想う」
 

平成20年7月30日号 No.157

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.12
「五輪の父の言葉」
 

平成20年6月30日号 No.155

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.11
「負けてしまった君へ」
 

平成20年5月30日号 No.153

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.10
「背負う」
 

平成20年4月30日号 No.151

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.9
「応援に行こう」
 

平成20年3月30日号 No.149

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.8
「スポーツ、でしょう」
 

平成20年2月29日号 No.147

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.7
「高い目標に挑む」
 

平成20年1月30日号 No.145

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.6
「頑張れ!」
 

平成20年1月3日号 No.143・144

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.5
口下手な方へ
 

平成19年11月30日号 No.141

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.4
負けてはいけない理由
 

平成19年10月30日号 No.139

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.3
美味しく召し上がれ
 

平成19年09月30日号 No.137

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.2
クローゼットの怪物
 

平成19年08月30日号 No.135

トップアスリートの目 元オリンピック競歩選手 柳澤哲−−−−−Vol.1
誰よりも高く、誰よりも遠く、そして、誰よりも速く
   
   
トップアスリートの目  Vol.13 「五輪を観て想う」

 五輪で元スポーツ選手がTVにキャスターや解説者として登場したとき、「選手のときはコメントが面白かったのにキャスター・解説者になったらコメントがつまらなくなった」と思われた方もいるだろう。しかし、つまらなくなる理由がある。TV局側から万人受けする当たり障りの無いコメントを求められるからだ。
 実際、私自身も昨年の大阪・世界陸上で解説をさせて頂いたが、的確なコメントより万人受けするコメントをTV局側から求められた時があった。
 選手の時は自分自身の事なので面白いコメントを好きに喋れるが、解説だと他の選手の事を面白おかしくは言えない。第一に多くの方にTVを観てもらいたいと思うからこそついコメントも万人受けする方に流されがちになるものだ。立場が変われば自分としては同じようにしているつもりでも、周囲の評価はどうにでも変わってしまう例だろう。

 五輪選手も同様だ。メダルを「期待されて獲った人」 「期待されて獲れなかった人」「期待されていないのに獲った人」「期待されなくて獲れなかった人」。どの選手も五輪で同じように死力を尽くして戦った。 しかし、それぞれ帰国後、立場は変わる。立場が変わらないのは「期待されなくて獲れなかった人」だけだろう。
 立場が変われば評価のされ方が変わってくるのは当然だ。しかし、それはあくまでも周囲の評価だ。自分が目指すものを見失ってはいけない。帰国する選手達にそう声を掛けてあげたいと五輪中継を見てつくづく思った。

トップアスリートの目  Vol.12 「五輪の父の言葉」

 「五輪は参加する事に意義がある」近代五輪の父と言われたクーベルタン男爵の言葉だ。五輪の精神を語る言葉として多くの方に知られている有名な格言だ。 北京五輪が始まる。今回の日本選手団には水泳の北島選手・マラソンの野口選手らメダル候補も多くいる。この五輪で正式種目から外れる野球ではプロ野球が一丸となってメダルを目指している。メダルを獲るために世界一の練習をし、五輪の舞台に立つ彼らが「参加する事に意義がある」と思っているとはなかなか想像し難い。
 実はこの「五輪は参加する事に意義がある」という言葉はクーベルタンの言葉の断片でしかない。正確には、「勝つことでなく、参加することに意義があるとは、至言である。人生において重要なことは、成功することではなく、努力することである。根本的なことは、征服したかどうかにあるのではなく、よく戦ったかどうかにある」という言葉らしい。それに元々は「五輪は参加する事に〜」とは教会の司教が言った言葉に感銘を受けたクーベルタンが演説で使って有名になったと言われている。
 クーベルタンの言う、人生で重要な事である「成功することではなく、努力すること」「征服したかどうかではなく、よく戦ったかどうかにある」を選手が五輪を通して感じる事ができたなら、「五輪に参加する事の意義」も見つけられるのでは無いだろうか。五輪の魅力はメダルだけでは無いというメッセージを選手達に是非見せてもらいたい。

トップアスリートの目  Vol.11 「負けてしまった君へ」

 スポーツは時に残酷だ。結果に必ず勝敗や順位がつき明確に勝者と敗者を分ける。ある選手が長距離競走で最初から最後まで最下位を走ってゴールした。走っている間、ずっと最下位(負け)の姿を観衆に見られたことになる。ゴール後その選手
は何を感じたろうか?
 悔しさは当然あるだろう、それよりもずっと最下位を走ってしまって恥ずかしいという気持ちや、もっと悪く考えれば自分にはその競技は向いていないと諦めてしまう感情の方が強くなるのかもしれない。負けてしまった時はどうしても感情的にネガティブな思考になりがちだ。
 そんな時、考えてみて欲しい。最初に出た試合から一度も負けずに競技人生を終える選手などいるのだろうか? と。
 誰しもが試合に出る以上何度と無く負ける。その度に負けから学び「次こそは!」と勝つ為の努力をするのではないだろうか。
 勝ち続ければやがて負けるときがくる。同じように負け続けてもやがて勝てるときがある。たまたま今負けたからと言って一生負け続けると決まった訳ではない。だが、覚えておいて欲しい、負けた悔しさを努力に変えない限り一生負け続けてしまうということを。何の努力もしないで勝てるほど試合は甘くは無い。
 誰しも負けたくは無い。しかし、負けたからこそ、他人を思いやれる選手になれ、勝つ事の本当の意味を掴めるのではないだろうか。
 スポーツは時に残酷だ。
 しかし、その残酷な部分があるからこそ優しくなれ、強くもなれる。

トップアスリートの目  Vol.10 「背負う」

  病気でも寒い訳でも無く、突然身体が震えた事が今までに一度だけある。それは五輪出場のために空港へ移動するタクシーの中だった。後部座席に座り、今後の試合までのスケジュールを頭の中で確認していたときに身体が震え始めた。直ぐに止まったが原因はおそらく極度の重圧を感じたからだろう。日の丸を背負って五輪に出るという事を痛切に感じた瞬間だった。

 日本代表に選ばれた選手が背負うものは何かとイメージすれば、多くの方が「重圧」「期待」「責任」などだろう。選手にもよるだろうが、おそらく大多数の選手は「日の丸の責任」を一番意識するはずだ。「重圧」は日の丸を背負うまでの戦いにおいて充分に感じて戦ってきた訳だし、「期待」は自分自身が一番自分に期待をするものだから背負うというほどでもない。しかし、「日の丸の責任」とは国を代表して競技をするという事だ。個人ではなく国の代表という「公」としての責任が存在し、ただ試合をすれば良いと言う訳ではない。 敗れるにしてもどう敗れたのかを問われても仕方が無い。確かに「日の丸の責任」の重圧は大きい。しかし、重圧を感じるということは高い目標を持っているという事だ。目標が低ければ容易である分、重圧など感じはしない。

 サッカー日本代表のW杯三次予選が6月に行われる。観戦のポイントは選手起用・戦術・采配などだろう。しかし、私がつい目が行くのは試合をする選手が「日の丸の責任」を感じた魂のこもった熱いプレーをしているか? だ。それに尽きる。

トップアスリートの目  Vol.9 「応援に行こう」

 スポーツを観戦する際、誰しも贔屓の選手かチームを応援しながら観戦する方がほとんどだろう。そして応援スタイルは実に多種多様だ。
 野球では「鳴り物(ラッパや太鼓)」の応援が主流の日本のプロ野球に対し、メジャーでは鳴り物の応援が無く、打球音や歓声といったプレーだけから生まれる音だけが球場に鳴り響く。サッカーは国によっては試合会場で発炎筒が焚かれ、興奮したファンの喧嘩も日常的。ある国のバレーボールの試合ではTV局がアイドルグループとタイアップするような形で観客を集め、コンサートなのかバレーの応援なのか…、といびつさを感じさせたりもする。

 とはいえ、応援には不思議な力がある。それは応援には「喜怒哀楽」の要素が全て入っているからだろう。応援している選手が良いプレー・結果を出せば喜び、気の無い試合・つまらないミスをすれば怒り、ベストを尽くして結果が悪ければ共に哀しみ、そして勝負の駆け引きや技術の妙を楽しむ。「自分ではない誰かを応援する」そんな些細な事で「感情」が大きく刺激されるのは「応援=感情」だからだろう。

 気を付けたい事もある。応援とは選手と観客がいて成り立つ行為だが選手・観客としてのマナーは守りたい。選手は応援される事に驕らずひたむきに(当然です)、応援する側も選手の負担となるような過度な言動は慎みたい。

 GWだ。スポーツの催しも多いはず。一生懸命にプレー・応援し、自分の感情を揺さぶろう。

トップアスリートの目  Vol.8 「スポーツ、でしょう」

 あるスポーツの話だ。競技人口は700〜1000万人とも言われる。その内、現役のプロが150人程度。主要な試合は7つのタイトル戦。タイトル争いは激しく、1回の試合で体重が2s程度減る事もあり、2日がかりで争う事も珍しくない。

 4月に行われるタイトル戦は、その競技で最も長い歴史を持ち(称号としては1612年より存在)、もつれれば3カ月の長丁場となる。しかし、対戦する選手はその間にも他のタイトル戦の予選にも参加し、日々戦いの厳しい生活を強いられる。勘の良い方ならこのスポーツが何か判ったろうか。答えは「将棋」だ。

 この4月8日から「名人戦」が行われ、羽生善治選手が森内俊之名人に挑戦する。TV中継もある。しかし、何とも映像的にはつまらない。一手打つのに、長ければ30分以上を要する事もしばしばだ。二人の男が将棋盤を挟んで苦悶する表情が流れ、ようやく動いた一手を解説員が展開を予想する。おおよそスポーツ中継とは思えない映像だ。しかし、映像がつまらないからと言って番組がつまらない訳ではない。「次の一手を予想する」という思考を楽しむ要素が視聴者にあるからだ。
 
  このように思考能力を主に用いるスポーツを国際的には「マインドスポーツ」と言い、欧州の将棋「チェス」は国際オリンピック委員会にも加盟しており、アジア大会では正式種目として採用されている。
 駒を通して、己の持てる気力・知力・体力をぶつけ合う。これをスポーツと呼ばずして何と呼ぼうか。

トップアスリートの目  Vol.7 「高い目標に挑む」

  転倒を繰り返しながらゴールを目指す、大阪国際女子マラソンでの福士選手の姿に「自分だったら止めている」と思った方も多いだろう。しかし、誰しも好きな事をしているのであれば簡単に諦めずに、何度でも立ち上がろうとするはずだ。誰もが持っている心の強さを福士選手が実践していた場面でもあっただろう。
 福士選手が何度も転倒して目指した、女子マラソン北京五輪代表選考がいよいよ大詰めを迎える。おそらく残り一つしかない代表枠が名古屋国際女子マラソン(3月9日)で決まることになるだろう。シドニー五輪の金メダリストの高橋尚子選手も出場予定だ。女子マラソン最後の選考会だけに高橋選手以外にも強豪が揃い苛烈なレースになることは必至だ。
 優勝のポイントを挙げるならば、ヒントは福士選手にある。彼女は日本女子トラック種目長距離界の女王だ。マラソンを走らなくても北京五輪代表にトラック種目で選ばれる可能性が高い。しかし、過去の世界陸上・五輪を通じて入賞は一度も無い。だからこそ、北京五輪ではメダル争いが出来るマラソンを選んで挑戦したのだろう。決して北京五輪代表になること事態が最終的な目標では無かったはずだ。
 名古屋で勝つのは代表に選ばれる事より、世界(北京五輪)でどう戦うかを意識して試合をする選手だろう。無論、代表に選ばれなければメダル争いも何も無い。しかし、大阪国際女子マラソンで積極的なレースをした福士選手の姿を思い出せばそう思わずにはいられない。

トップアスリートの目  Vol.6 「頑張れ!」

  「頑張る」という言葉を誤ってしまう選手をたまに見かける。「頑張る」というより「無理」をしているという選手だ。この「無理」と「頑張る」の大きな違いは、選手が自分自身の行なっている競技を好きか嫌いかの違いだろう。先生やコーチに言われて仕方なく練習をすれば、きつい練習も気持ちに「無理」をしながら練習をする事になる、結果その競技を嫌いになってしまう可能性もでる。競技が好きであれば、楽しいから「頑張れる」ものだ。しかし、頑張ったから常に良い結果を出せるとは限らないのもスポーツだ。昨年の世界陸上、50km競歩で選手への誘導ミスがあった。人間のやる事にミスはつきもの、運が無かったと言われてしまえば仕方がない。しかし、運が無かったでは済まされないものが、ハンドボールのアジア予選だ。公平なジャッジが行われなかった為、予選やり直しとなった。スポーツは審判が公平であるという上で成り立っている。むろん、多少のミスジャッジはあるだろう。しかし、それが作為的に行われ、選手の頑張りや結果が奪われるという事は断じてあってはならない。一度は決まった北京五輪のアジア代表だが、再度予選が行われたのも選手の「頑張り」を知る関係者の想いと熱意があったからだろう。
 「練習を頑張る」のは結果を出す為の全てでは無く、一つの要因にしか過ぎない。「頑張り」続ける事によって様々な要因が生まれ結果へと繋がって行く。頑張ったその先には、必ず何かが待っている。

トップアスリートの目  Vol.5 口下手な方へ

  大学スポーツの最高峰の箱根駅伝がお正月に行われた。毎年視聴率が30%近くあり、TV等で観戦をした方も多いだろう。マラソンのように独りでゴールを目指すのではなく、東京・箱根間217・9kmを10人の走者で2日間かけて襷を繋ぐ。この襷リレーが箱根駅伝の大きな魅力の一つだ。
 選手達は襷を繋ぐために死力を尽くす。他校の選手に離されれば一秒でも縮め、もし、追い上げられれば、一秒でも離して仲間に襷を繋ごうとする。そうやって繋がれてきた襷を握り締めた走者が中継所に入ってくる。
 少しでも速く襷を渡そうと手を伸ばして…。

 伝え・繋がれてきた襷を受け取るだけで、言葉は無くとも相手の言葉や想いを理解し、その想いに自分の想いをも乗せて次の走者に繋ぐために走り出す。
 そう思えば「何かを誰かに伝える」のは襷リレーのようなものかもしれない。
 実際にコミュニケーションで相手にこちら側の意思を伝えるのに重要な要素は、言葉は20%程度で残りの80%はボディランゲージだそうだ。いわゆる、仕種とか表情だ。何かを相手に伝えようとして、上手く伝わらない時に、言葉に頼ってしまえばしまうほど、逆に伝わり難くなってしまう事がある。そんな時は表情や仕種も使ってみよう。きっと相手はこちらが伝えようとする事を耳だけで理解しようとするのでは無く、目からも感じ取ってくれるはずだ。言葉を襷だと思って伝えてみよう。きっと伝わるはずだ。


トップアスリートの目  Vol.4 負けてはいけない理由

 欧州でのプロサッカー選手は過酷だ。リーグ戦・カップ戦・自国の代表戦もあり、強い選手ほど、過密日程に疲弊しているのが現状だ。だからであろか、「代表を引退する」という言葉がある。自分の所属するクラブの試合にのみ出場し、自国代表の試合には出場しないという引退だ。「過密日程すぎてベストのパフォーマンスを試合でだせない・年齢的にも難しい」などが理由らしい。実際は「給与を払っているのは所属クラブであり、代表戦で怪我でもして試合に出られなくなれば、年俸に影響する」という本音も見え隠れする。
 しかし、試合で結果を出し、それが年俸となって評価されるプロである以上、極々当然の理屈だ。
 それなりの日当しかでない自国の代表戦は、強くて高年俸の選手であればあるほどプロの選手としての魅力を感じ無いのは仕方が無い事だろう。
 台湾で開かれる野球のアジア選手権(1月1日〜3日)に、プロ野球の選手達が出場する。五輪のアジア地区の代表を決める重要な大会で、しかも優勝国しか五輪に行けない。選手にとって、来季に向けて休養をするか、不本意な成績で終わったのであれば、トレーニングをする時期の開催だ。
 だが、選手達は休む事無く戦う身体を維持し続け、試合に臨まなければならない。プロという年俸(お金)で評価される面を持つ彼らが「金メダル」という、栄誉の為に集まった。お金儲けの手段では無い、本来のスポーツの姿がそこにある。
 だからこそ、負けて欲しくはない。


トップアスリートの目  Vol.3 美味しく召し上がれ

 皆さんは美味しい料理を食べた事があるだろうか?
 料理人はまず、どんな料理を作るかを考え、それにあった食材を購入してくる。全部の食材や調味料が似てしまったら味が単調になり美味しくならない。途中で味がイマイチであれば新たに調味料を足すのも手だ。しかし、美味しそうに盛り付ける事のできた料理を見ているのも良いが、料理の一番の目的は「食べる」事だ。
 今、プロ野球が熱い。メジャーも日本の野球も最後のクライマックスを迎えている。
 各球団がどんな勝てるチームを作るかを考え、既存の選手とそれに合った選手の補強をして、自分達の目指す球団を作る。シーズン中に足らない部分があればトレード等で補う事もあるだろう。いろんな持ち味の選手が融合する事によってチームとしての強さや味が出る。似たような選手ばかりを集めてしまうとそれこそ大味になって美味しくない(強くならない)。それは料理人が最高の料理を作る作業に似ているといっても良いだろう。
 そして、今、特に美味しく出来上がった2チームが互いの持ち味をぶつけ合っている。
 「世界一」「日本一」の称号を得るために。
 これを、ニュースのハイライトを見るだけの味見程度では勿体無い。観戦するのがベストだが、中継でも良い。
 一瞬一瞬のプレーを全力で彩る選手をリアルタイムで応援したい。応援しているチームが負けたとしても、美味しい料理を食べた後の満足感は得られるはずだ。


トップアスリートの目  Vol.02 クローゼットの怪物

 今年は各競技で世界選手権が行われている。体操・柔道・レスリングも行われたばかり。柔道・レスリングではこの世界選手権の結果によって北京五輪への出場枠の獲得がかかっていた。
 五輪に出場できる・できないは、その競技の死活に係わる大きな問題であり、選手にかかる重圧も当然大きかったはずだ。
 「重圧」とは「良い結果をだしたい」・「期待に応えたい」という願望から「失敗したらどうしよう」という「恐怖心」が生み出す心理的産物であり、目には見え無い。しかし、その「目に見えぬ」ものが原因で選手は試合で身体が硬直したり、筋肉が痙攣等起したりする。重圧が作り出す恐怖心に身体の自由が奪われる。そういう意味ではアスリートとはいえ、恐怖に慄く所は一般の方と何ら変わりが無い。いくら肉体的には優れていても精神力までは簡単に鍛えられない。
 アメリカの子供達はクローゼットには怪物が隠れていると信じていてクローゼットを怖がる子供が多いそうだ。そんな時、親御さんはこう声を掛ける。
 「クローゼットを開けてごらん。怪物は逃げていなくなるから」
 重圧がかかる試合で大切なのはクローゼットを開けられる勇気を持つ事だ。所詮、「重圧」を生み出す「恐怖」とは実体の無いもの。クローゼットを開ければ、心が作り出した怪物は消え去るだけだ。
  「目に見えぬ」ものに立ち向かい、その重圧を乗り越え、その経験から生み出された結果にこそ、価値がある。


トップアスリートの目  Vol.01 誰よりも高く、誰よりも遠く、そして、誰よりも速く

 世界中からトップアスリートが日本に集まっている。ご存知の方も多いかと思うが、現在、大阪で世界陸上が行なわれているからだ。
 今回の世界陸上は、来年開催が予定されている北京五輪に向けての試金石。高いレベルの争いになるのは間違いない。
 注目すべき種目は、男子200m。末續選手が出場する。他の外国人選手と比べ、腕も足も細く華奢だ。しかし、上半身が安定した、頭の上下動の少ない洗練された走りで世界と互角に渡り合ってくれるはずだ。
 最終日に行われる女子マラソンはメダルの期待がかかる。しかし、灼熱の大阪が選手を多いに苦しめるのは必至だ。暑さ対策をどう準備してくるのか? それがメダル獲得への大きな鍵となる。走っている選手の表情を観戦するのも面白い。TV画面では淡々とした表情に見えても、選手自身は苦しいが、表情に出さないよう堪えながら走っているのが実情だ(これが本当に大変)。少しでも苦しい表情を見せようものなら他の選手にペースアップをされ、振るい落とされにかかられる。
 そんなところをポイントに世界陸上を観ると一味違った面白さや、トップアスリートの凄さが身近に感じられるだろう。
 今回はマラソンより長い50q競歩が生中継される。日本からは3名の選手が挑戦。前回の世界陸上入賞者もいる。今回は入賞以上を期待したい。
☆ご好評いただいた「小林寛道教授の運動神経を良くする法」のコラムが終了。柳澤さんへバトンタッチ。どうぞお楽しみに。

 


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